埼玉トゲフタオチャレンジ2017
12/27で2017年の大学での授業は終了しました。
その日の夜に帰省。年末年始は埼玉で過ごします。
もちろん採集に行かないはずはなく……
2017.12.28

2時間ほど電車にゆられ、駅からひたすら歩いて山に入る。
道を無視して斜面を登り、尾根に出るとそこにはモミの木がありました。
今日は…ここ埼玉県でトゲフタオタマムシを狙います。
具体的にどの辺で記録されてるかとか全然知らないのですが…植生図とにらめっこしながらモミ群集がある場所を選びました。
最近やっと気付いたのですが…モミって尾根上に多いですよね(汗)

モミの木を辿って尾根上を進みながら…近くにあるヒノキやスギの樹皮をめくっていく。いつもの流れです(笑)
前回、岐阜で探した時はすっかり忘れていてやらなかった事がありました。

脱出孔の確認。
近くに落ちている枝を調べると、それらしい脱出孔がいくつも見当たりました。
期待が高まります。
材を割って幼虫でも出てくれれば確信が得られるのですが、割って出て来るのはカミキリの幼虫ばかりでした。

しかも思いっきりクラッシュしてしまった…
モミの落ち枝に入るカミキリには「メディオ」と呼ばれるヨツオビシロ…あれなんて名前だっけ?(汗)
とにかく、その「ヨツなんとかさん」というカミキリが入る事だけは覚えていました。
いそうな気はしますが材管理できる自信がないので今日はカミキリ材も持ち帰りませんでした。
トゲフタオがいる可能性がある、と分かったところで気合いを入れて樹皮めくりを再開します。

オオトビサシガメ
Isyndus obscurus (Dallas, 1850)
樹皮めくりではおなじみの虫の一つですが…未採集種です(汗)
せっかくなので今回は採集しておくことにしました。

クサギカメムシ
Halyomorpha picus (Fabricius, 1794)
トゲフタオ採集で一番よく目につくのはこの虫です。
これも未採集種ですが…今日はいいや(汗)

大きな樹皮下からはまとまって出ることも。
最近やっと気付いたのですが…ヒノキの大木って尾根上に多いですよね(汗)


モミの立ち枯れもありました。
周囲は完全に針葉樹林なのですが、怪しい脱出孔というかアオタマとしか思えない脱出孔が空いていました…
実は近くにアオタマの記録がある場所があるのでここに生息していてもおかしくは無いのかなと思いましたが、一体どこのイヌブナから飛んで来てるんだろう…(汗)
ひたすら樹皮めくりを続けますが、特に何も起こらないまま昼を過ぎる。
「こんなん絶対いるでしょ!」と思うような大きな樹皮の下にもカメムシがいるだけでトゲフタオは現れない…
ベニヒラタムシが一頭得られましたが、あとはカメムシばかりです。
そういえばこの地の樹皮めくりではムカデがあまり出てこないような気がする…
なかなか期待通りにはならなくて心が折れはじめた時、救世主が現れました。

「!!!!!!!」

ヤノナミガタチビタマムシ
Trachys yanoi Y. Kurosawa, 1959
「チビタマあああ!!!!」
最後にタマムシに出会ったのが10月8日のマメチビタマムシなので…実に2ヶ月と20日ぶりのタマムシになります(汗)
長野で散々ケヤキの樹皮をめくってそれでもダメだったので…種類はどうあれやっとタマムシが出てくれて嬉しいです。
針葉樹の樹皮下にも入るとは知っていたけど実際に見たのは初めてでした。
なぜか一本の木にまとまって10頭弱越冬していて、それ以外は隣の木に一頭見つけたのみでした。
あそこに集まっていたのは何か理由があるのだろうか…?
チビタマが出て、少し安心してしまった自分がいる。
まだだ…トゲフタオ出すまではまだ頑張らないと(汗)
とりあえず昼飯も食って一旦休憩。
食いながら軽く近くの樹皮をめくってみると…

アリタケの一種?
アリタケが出てきた(汗)
樹皮めくりで見つかることもあるんですね。
ささっと昼食休憩を終了し、樹皮めくりを再開します。

オオトラカミキリの食痕
オオトラカミキリの食痕ってモミさえあれば案外どこにでも見つかるような気がする。
勿論、見つかる数に差はありますが。
このポイントはまあまあ見つかるのですが、オオトラカミキリ探すには向いてないかなあ…
その後、なーんにも起こらないまま日が暮れました。

この脱出孔は一体なんなんだ!?
カミキリのやつなのかな??
見つかる脱出孔は少なくないし、本当にトゲフタオが生息してるなら普通に出てきても良さそうだった。
納得がいかなかったので、ヘッドライトを装備して悪あがきをする事に。
とはいえ、もうこのポイントでめくれる範囲の樹皮をほとんどめくり終えてしまっています。
これから樹皮めくりに賭けるのは正直言って無謀すぎるから…材を割ってみよう。
脱出孔の空いてる材じゃなくて、全く空いてないやつ。まだ幼虫が入っていそうなやつを割ってみよう…
そういった新鮮な材は硬くてうまく割れない事が多いのですが、この時は何故かスパーンと綺麗に割れて、中から何かが飛び出していました。

「なんだよこれ…」
「嘘だろ!?」
出てきたのは紛れもなく…タマムシの幼虫でした。
かなり適当に割ったのにも関わらず奇跡的に無傷でした。
トゲフタオタマムシの幼虫にしては大きいようにも感じだけど、モミのこんな材に入るタマムシはトゲフタオ以外には考えられない… 考えられなかった。

幼虫は別で柔らかい木屑とともにケースへ。
割った材もそのまま持ち帰りました。
ようやく尻尾を掴んだ…けど。
何故今になって出てくるんだ…
なんで今の今まで出てきてくれなかったんだ……
もう辺りはずいぶん暗くなっていて…強制終了。
ダッシュで下山する羽目になった(汗)

これはまた来るしかない流れなのかな…
考えてみれば、前回みたいに手がかりが何も得られないよりはよっぽどマシだった。
出来れば今年中に採集して終わりたいから…リベンジするなら 明日もう一度ここに来るしかない。

この日採集したタマムシの幼虫はおよそ30mmでした。
大図鑑でトゲフタオタマムシ成虫の体長は10〜15mmとなっており明らかに幼虫がデカすぎます(汗)
モミに入るタマムシが他にいないかと探していると… クロタマムシの寄主植物にモミが含まれている事に気がつきました(汗)
ただし、タマムシの幼虫は蛹になる際にかなり縮むという特徴があります。
Twitter上で色々と教えていただいた結果… この幼虫がトゲフタオタマムシである可能性は十分あると分かりました。
そもそもクロタマムシだったとしても多く見られたあの脱出孔の大きさが合わないので… この幼虫を信じる事にしました。

元々材にあった坑道を広げて幼虫を置いてみたところ、なんとか潜っていってくれました。
無事に羽化してくれますように…
そして私は……
2017.12.29

翌日の朝も、気がついたらモミ林に立っていた。
あの幼虫がトゲフタオであるという確信がまだ得られていない以上、ここに来るのは無意味な気もしていた。
幼虫が羽化するまで待ってからでいいと思った。
でも…
トゲフタオタマムシ…成虫に会わせてほしかった。
まだやれる…このまま2017年は終われない。
そんな思いで無謀にも再挑戦する事にしたのでした。
この日は前日に探索したポイントとは別の尾根に登りました(距離的にはほとんど離れていない)

改めて材に空いている脱出孔を調べて… 明らかにクロタマムシの大きさではない事を確認しました。
(ごく少数ですが…クロタマらしき大きさの脱出孔も確認しました)

あとは出るまで信じてめくり続けるだけです!!



こちらのポイントは前日の所よりモミが多いようで、立ち枯れも数本見つかりオオトラの食痕も結構ありました。
オオトラは来るか分かんないけどアオタマを採りにくる時はこちらの方が良さそうです。

左: ハサミツノカメムシ
Acanthosoma labiduroides Jakovlev, 1880
右: トホシカメムシ
Lelia decempunctata (Motschulsky, 1859)
昨日の結果を受けて…今日は今までスルーしていたカメムシも積極的に採る事にしました。
こういう時だからこそ普段なかなか手を出せないジャンルに手を出すのです!!(?)
ハサミツノカメムシはちょくちょく出てきますがトホシカメムシは初めて見た気がします。

クサギカメムシ
Halyomorpha picus (Fabricius, 1794)
そしてクサギカメムシも初採集しました。
左の赤いタイプだけ(汗)
モミの落ち枝をチェックしている時にふと思った。
「トゲフタオの脱出孔の写真は無くとも、ヨツなんとかカミキリの脱出孔の写真はググれば出てくるのでは!?」
出てきました(笑)
やっぱりあの脱出孔はカミキリのものでは無い…

カミキリの脱出孔って大抵こんな感じだよな…?
楕円に近い形にはならないよな!?

近くの材を割ったらカミキリの幼虫が多数出てきたので今日は材を切り分けて持ち帰る事にしました。
この幼虫はキボシチビカミキリらしい?のですが、もう少し大型の別種と思われる幼虫の尻を確認しているのでそちらにメディ…ヨツボシシロオビゴマフカミキリを期待しておこうと思います。
ぶっちゃけ何が出てきてもほとんど初採集になると思うので…そこまでいいカミキリに強く期待はしていません(汗)
樹皮めくりを続けていると…この二日間で初めてゴミムシを引き当てました。
クロツヤヒラタゴミムシの仲間のようです。
あれ!?
こいつ樹皮下で越冬するようなやつだっけ!?
逃げないように慎重にカメラを向けた時、気づいた。
死んでる…いや。

「これ冬虫夏草じゃねえか……(汗)」
前日に引き続き本日も樹皮めくりで冬虫夏草を引き当ててしまいました。
結構見つかるものなのか、最近の私は冬虫夏草運(?)が上がっているのか(汗)

その後も尾根上に延々と続くモミとヒノキの大木を、ヒノキの樹皮をめくりながらたどっていく…
2日目でさすがに疲れが出始めたのか、めくって出てきたクサギカメムシにドキッとした事が何度かあった(笑)
日が傾き始めて、そろそろ敗北の予感がし始める。
材割りでまた幼虫狙おうかな、と地面の材を調べて…気づいた。
脱出孔が無い。
考えてみれば、カミキリの幼虫を採集した場所の時点で疑惑の脱出孔を見なくなっていた気がする。
この辺りにはいない…?
歩きすぎたのか……
ここまで数時間の樹皮めくりが実質無意味な行為だった、そんな気がして ここでさすがに心が折れてしまった。
最初のモミ群集まで急いで戻り、こちらには脱出孔がある事を確認したものの…

もうすっかり意気消沈してました…(笑)
トゲフタオの樹皮めくりは精神的に辛い採集と言われる事が多いです。
イソチビゴミムシみたいな、あの永遠に出てこなさそうな絶望感とはまた違ったタイプの辛さです。
「ここは出そう!」→「出ないか…」
「これは出るでしょ!!」→「なんだカメムシか…」
期待してはガッカリ、その繰り返しです。
いくらタマムシが好きだとは言っても、こんなのが2日も続けばさすがに嫌にもなります…(笑)
結局、この日は日が暮れる前に終了する事にしました。
結局、二日間の樹皮めくりでトゲフタオタマムシ成虫を引き当てる事は出来ず、 悔しいですが今年のトゲフタオチャレンジは終了という事になりました。
埼玉トゲフタオチャレンジ、完敗…とは言えません。

まだ希望が残っています。
信じよう、トゲフタオが来年出てくる事を信じよう…
しかし来年トゲフタオが羽化してあの地に生息している事が確信できたとしてももう一回冬に樹皮めくりに行きたいとはさすがに思わないでしょう(笑)
成虫での採集もいつかはリベンジしなければなりません。
またやる気になるまで待ちますか(笑)
【結果】 ※色付きは自己初採集
タマムシ幼虫
1ex.+材
ヤノナミガタチビタマムシ
Trachys yanoi Y. Kurosawa, 1959
4exs./
ベニヒラタムシ
Cucujus coccinatus Lewis, 1881
1ex./
未同定コメツキ
1ex./1ex.
オオトビサシガメ
Isyndus obscurus (Dallas, 1850)
1ex./
ハサミツノカメムシ
Acanthosoma labiduroides Jakovlev, 1880
/1ex.
エサキモンキツノカメムシ
Sastragala esakii Hasegawa, 1959
1ex./
トホシカメムシ
Lelia decempunctata (Motschulsky, 1859)
/1ex.
クサギカメムシ
Halyomorpha picus (Fabricius, 1794)
/1ex.
未同定冬虫夏草×2
カミキリ材×3
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