トゲフタオタマムシとの再会


トゲフタオタマムシといえば。
岐阜県のアオタマポイントまで行って完全に外し、
昨年末、埼玉県の同じ場所を2回訪れてもそれらしき幼虫のみで終わってしまい、3連敗中です…

埼玉の2連ボーズが精神に与えたダメージはかなり大きく、もう今シーズンは諦めてもいいかなと思っていました。

あれから1ヶ月ちょい経ちました。






リベンジしたいな。


まだまだ諦めきれていなかった(笑)
しかし、埼玉のポイントにもう一度挑むのは無謀なように感じ…色々考えた結果、比較的採りやすい(イメージのある)神奈川県へ一度だけ行ってみることにしました。

神奈川県では2014年に一度有名産地で一頭だけ採集しています。

他にも一回行っているのですがそちらはボーズ。
今年の目標の一つに「過去に失敗した場所でのリベンジ」というのがありまして…本当はもう一度そこに行くつもりでした。
しかし色々と調べているうちに「ここの方が良さそう…?」という場所を、有名産地では無さそうな所で見つける事ができたのでそちらでリベンジすることにしました。
確実な産地では無いにしても、神奈川で採れなかったら埼玉で採るのはもっと厳しくなりそうな気がしたので…自分の樹皮めくりはちゃんと出来てるのか?確かめるためにも大事な一回です。



ギリギリまで行くかどうか悩んでしまいましたが…結局。





2018.02.10__04:43 a.m.


寝たのは確か0:30回ってからだったので正直無理だと思ってたんですが、かなり久しぶりのシジミ起きにはなんとか成功した…
6:30とか微妙な時間の早起きより4:43の方が失敗率がかなり低い。やっぱりこれはシジミ効果なのか…(意味不明)

かなり短い乗り換え時間の中で、昼飯買いにいったり便意に襲われたり、新宿で軽く迷子になりかけたり(笑)しましたが…どうにか無事、時間通りに目的地付近に辿り着くことができました。

ここで、Twitterの方で相互フォローさせていただいてるさえ吉丁虫さんと合流しました。
さえ吉丁虫さんは私の知る限りでは一番歳が近いタマムシ屋さんです。
前日の夜遅くに話したにも関わらず、今日の採集にご一緒していただけることになりました。




まずは一つ尾根を越えて…さらに向こうに見える尾根に登ります。
モミが多く生えている(と思われる)本命のポイントはそこにあります。
こんな時に限ってスマホの位置情報がバグってしまい…ほとんど使い物にならなくなりました。
圏外でもGPSだけは使えるのですが…たまにあるダメな日に当たってしまったみたいです(汗)

道がよく分からなくなってしまったので、適当な斜面から登って適当な斜面を下り、谷を渡ったら適当な斜面から登ります。




目的の尾根に登ってみると、地面にはまだ雪が残っていました。
周囲は広葉樹が目立ち、下草がほとんど生えてない…尾根とは言ってもなかなかえぐい道(道?)を登っていたので途中からただの登山みたいな気分になってました(笑)
ただ、長野と違って普通に暑い…(汗)

しばらく尾根…というか稜線?を進んでいくとモミが目に付くのですが、周りにスギやヒノキの林が見当たらない…
植生図を見た感じだとちゃんとあるはずなのですが…ひたすら広葉樹林が広がっているようにしか見えません(汗)





念の為モミの落ち枝を調べてみると、ちゃんとそれらしい脱出孔が見つかりました。
一応この辺りにも生息してはいるのでしょう…さすがにいてくれないと困るけど(汗)
後は越冬場所になるスギ・ヒノキの林を見つけなければなりません。




ホソセスジムシ
Yamatosa nipponensis (Lewis, 1888)

尾根上にはモミの立ち枯れもいくつかあり、樹皮下からはこんな格好いい虫も出てきました。
過去に神奈川でトゲフタオを採った時にも、持ち帰ったモミの落ち枝からこの虫が出てきた事があったのでモミがお好きな虫なのかな…と思いました。
前回は紛失して標本に出来なかったのでしっかり採集しておきます(汗)

モミの立ち枯れにはアオタマっぽい脱出孔もありましたが、周囲にイヌブナが無さそうなので多分クロタマなのでしょう…
立ち枯れもそうですが、ミズナラ、カエデ類、ヤシャブシなど広葉樹の折れた木なども多くて、日当たりも風通しも良さそうだし夏場来たら絶対楽しいだろうな…と思いました。
この辺りの地域の夏場はヒルがすごいらしいのでとても来る気にはなれませんが(汗)




開始から3時間、斜面を登り降りしながら針葉樹林を探し、ここでようやくそれらしい林を見つけました。
稜線の上からだと全く見えなかったのは斜面が急だったからなんだろうか…(汗)


20180212104931ee2.jpeg

ここなら絶対採れる…謎の自信があった。
モミがあれだけあって、越冬できる針葉樹林が限られてるんだから…

さえ吉丁虫さんと二人で、別れてスギの樹皮をめくっていきます。




左上: ベニヒラタムシ
Cucujus coccinatus Lewis, 1881

右上: キタホソアトキリゴミムシ
Dromius (Dromius) nipponicus Habu, 1983

左下: ヒメツノゴミムシダマシ
Cryphaeus duellicus (Lewis, 1894)

右下: ヒメクチカクシゾウムシ
Catarrhinus umbrosus Roelofs, 1875

樹皮めくり採集ではだんだんお馴染みになってきたベニヒラタムシを始めとして、今まで行ったどの場所よりも豊富な種類の甲虫が出てきて驚きました。
多分広葉樹林が近くにあるからなのでしょうが…

ここの樹皮めくりで出てくるゴミムシは全てキタホソアトキリゴミムシのようでした。
※違いました(汗)




クスアナアキゾウムシ
Dyscerus orientalis (Motschulsky, 1866)

ある時はデカいゾウムシが出て来て驚きました(汗)
この虫によって、仏事などで利用される「シキミ」という木が枯れる被害が出ているのだとか。
シキミがどの木なのか全然分かりませんが、植生図にあるモミ-シキミ群集って名前から察するにモミと混ざって周辺に生えているのでしょう…




左上: マツヘリカメムシ
Leptoglossus occidentalis Heidemann, 1910

右上: エサキヒラタカメムシ
Aradus esakii Kormilev et Heiss, 1976

左下: シモフリクチブトカメムシ
Eocanthecona japonicola (Esaki et Ishihara, 1950)

右下: キモンナガカメムシ
Paradieuches lewisi Distant, 1883

カメムシも…出るには出るのですが今までやって来た場所と比べると出てくる数が少ないかなと思いました。
種類はやっぱり豊富なのですが、どこでも多いものだと思っていたクサギカメムシは数頭しか見た覚えがありません。




もうちょっとまともに写真撮っとくべきだったと思うのですが…こんな風に大部分の樹皮が無くなってしまっているスギも多く見られました。
これがシカによる樹皮剥ぎというやつなのでしょうか…?
(シカが角を樹皮に擦り付けて剥がしてしまうのだとか)

この日も何度もシカを目撃してるので個体数はかなり多そうな感じです…
下草は無くなって乾燥するわ、ヒルは増えるわ、樹皮剥がされるわ…増えすぎたシカはいろんな方面に悪影響を与えてしまっているようですが。

さえ吉丁虫さんが過去に別の場所でトゲフタオタマムシを採った時の木はこんな感じだったのだそうです。
ここは慎重にめくらなければなりません…



ゆっくりと少しめくってみると、たしかに樹皮下にいい感じのスペースが確保されていて…オオトビサシガメが見えました。
落下する虫をキャッチ出来るようにめくる樹皮の下に左手を添えて、さらに樹皮をめくっていくとオオトビサシガメが落ちて来ました。
オオトビサシガメは添えていた左手で上手くキャッチ出来ていたのですが、よく見ると 左手にはもう一頭、異なる虫が乗っていた。

それを理解するまで数秒…










トゲフタオタマムシ
Dicerca tibialis Lewis, 1893

「来た!!」

「来たあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」



迷うことなく、雪の中にダイブした(笑)




「よっしゃああああ……良かった……」



「……涙出てきた(笑)」

埼玉よりはおそらく採りやすい神奈川県産とは言え、今シーズン4度目の挑戦でようやく採れた一頭はとてもとても、とても重かった…
既採集種でもここまで感動させられるものなのかと自分でびっくりしてしまった(笑)

♀だとか、樹皮に止まってる写真が撮れなかったとかそんな事はもはや気にならなかった。いやむしろ。

とにかく、ちゃんと自分で選んだ場所で採れただけでも十分大きな一歩だ…





めくった樹皮はこんな感じ。
複数のオオトビサシガメとヤニサシガメが一緒に越冬していました。
このポイントでオオトビサシガメが複数出る樹皮下はかなり少なかったので、やはりこの樹皮剥ぎの被害にあった木はトゲフタオ的にもいい越冬場所になっているのかもしれません。

もちろんその後も追加を求めて頑張ったのですが、2時間近くやっても追加が出る事はなく。

このあと、さえ吉丁虫さんと合流し別の場所へ移動することに。
さえ吉丁虫さんは残念ながら採れなかったようでしたが… 正直全く逆の事態になっていても何ら不思議では無い状況でした。
二人で全く同じ木の樹皮をめくっていた事もあったので、私がトゲフタオを採れたのはほんの少しだけ運が良かっただけだったと思うのです…(汗)



別のモミ群集を目指して雪の積もった斜面を登っていきます。
もう既に足元はびしょびしょになっていますが、気温が高いのもあって冷たくないのが有り難いです…
雪が積もってるのは予想していたのに、長靴を持ってきて濡れないように対策するという発想は何故か出てこなかった(汗)
長靴だったら長靴で歩きづらいような気もしますが…(汗)

雪の上を這うように歩いていると、明らかに不自然な物体が目にとまりました…




冬虫夏草の一種

「なにこれ…(汗)」

何故こんな所に冬虫夏草があるのかが全く理解できませんが、とりあえず持ち帰ります。
寄主の昆虫が一体何なのかも分かりません、ハエっぽいけどなんか違うような…?
持ち帰る際に適当なケースに放り込んでしまったため同定の際に大事になりそうな先端の部分を失ってしまいました…




その後は別のスギ林でトゲフタオを探したものの、結局二人とも得ることはできませんでした。

トゲフタオ採集はここで実質終了となりここから帰りの流れになったのですがここからが本当にしんどかった(笑)

来た道をそのまま戻るのは危険すぎるので一度尾根を下って下の車道に出ることにしたのですが、まずその下りが危険だった。
私は何も考えずに、滑ったら軽く死にそうな崖っぷちを無理やり下ろうとしていたのですが…流石に、さえ吉丁虫さんからストップをかけられた(笑)



「命を落とすよりは怪我で済む方がマシですよ!」

「…それも、そうですね(汗)」



一人での採集ならまだいいとしても、同行者を危険な目に合わせてはいけない。
そんなごくごく当たり前の事にこの時やっと気がついたのでした。

「ルリクワの時より斜面緩やかだから大丈夫」とか 「コアオの時より雪浅いから大丈夫」とか。

これはそういう問題じゃないのだよ…


冷静になって振り返ると、この1日とんでもない事に付き合わせてしまっているような…

もはや今、ここから崖下に突き落とされてもおかしくないのではないか?(汗)

さえ吉丁虫さんに従って再び尾根を登っていき、稜線に出て、別の安全な尾根から下り…どうにか無事に車道に出る事が出来ました。
この時点で私の体力はほぼ尽きていました(笑)


この後ひたすら車道を歩いて、一つ尾根を越えてスタート地点までどうにか戻って来れたのですが… 冗談抜きで本当に死にそうだった(汗)

体力が尽きている上に、足の筋肉にも限界が来ていたようで…登りどころか下りでも足がまともに動かなくなって、数歩進むごとに休まなければ進めない事もあったほどでした。
最後の方は特に、 会話もまともに出来ていた気がしない(汗)

2日経った今、手足の各所で筋肉痛は治らず… 何故か腹筋まで筋肉痛になっています(笑)
息が上がりすぎて筋肉痛とかなのかな…何だそれ意味分からん(笑)

ちなみに神奈川にお住いの さえ吉丁虫さんは自転車で今日のスタート地点まで来る事が出来るので、その気になればこのポイントにリベンジしに来ることも出来るのですが…
「また来たいと思いますか?」と聞いたら、

(少なくとも同じルートでは)
「来ないですね!」

と仰っていました… 当たり前か(笑)


これまでの採集の中でダントツでキツかった採集として記憶に焼き付けられましたが…今回はさえ吉丁虫さんのおかげでどうにか無事に怪我なく帰ってくることができました。


本当にお疲れ様でした。
繰り返しになりますが、危険な採集に巻き込んでしまって本当に申し訳ありません…(汗)

またご一緒する事があったら、今度はゆるーい採集になるように考えます(汗)







トゲフタオタマムシ
Dicerca tibialis Lewis, 1893

二人して散々頑張った結果得られたトゲフタオタマムシはこの一頭のみ。
しかも♀です。
2014年に採集したものも♀で、私はまだ♂を見た事がありません。

中脛節内側に棘がある♂はこれよりも更にカッコいい。
樹皮に止まってる状態の写真も撮れていない。


十分だ。



これならまだ私には、トゲフタオに挑み続ける理由がある(笑)

今回の採集でまた新たに学んだ事もある。
少しずつではあるけど虫が多く出せるようになって来たと思う。

ここまで来たら。

埼玉で最終決戦といこうじゃないですか…

花粉が多くなると更に過酷な採集になりそうなので、なるべく早いうちにやりたいですね…
この一回で懲りるどころか一頭採れたおかげでやる気に満ち溢れています(笑)
筋肉痛さえ治れば行けそうです!!


【結果】 ※色付きは自己初採集

トゲフタオタマムシ
Dicerca tibialis Lewis, 1893
1ex.

キタホソアトキリゴミムシ
Dromius (Dromius) nipponicus Habu, 1983
2exs.

フトヒゲホソアトキリゴミムシ
Dromius (Dromius) crassipalpis Bates, 1883
1ex.

ホソセスジムシ
Yamatosa nipponensis (Lewis, 1888)
1ex.


ベニヒラタムシ
Cucujus coccinatus Lewis, 1881
1ex.

ミツノゴミムシダマシ
Toxicum tricornutum Waterhouse, 1874
1ex.

クスアナアキゾウムシ
Dyscerus orientalis (Motschulsky, 1866)
1ex.

ヒメクチカクシゾウムシ
Catarrhinus umbrosus Roelofs, 1875
1ex.


マツヘリカメムシ
Leptoglossus occidentalis Heidemann, 1910
1ex.

エサキヒラタカメムシ
Aradus esakii Kormilev et Heiss, 1976
1ex.

シモフリクチブトカメムシ
Eocanthecona japonicola (Esaki et Ishihara, 1950)
1ex.

キモンナガカメムシ
Paradieuches lewisi Distant, 1883
1ex.

冬虫夏草の一種
1ex.
関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント