オニグルミを掬いつづけろ



連休の最終日、海の日の話。
もともとこの三連休は山梨に遠征しようとか思ったりもしたのですが…
行くとして目標となるのはトガリバシラホシナガタマムシですが…

「長野に住んでるのに山梨までわざわざ狙いに行かなければならないほどの虫なのか?」

という疑問が生まれ…ダメ元で一回、近場で狙ってみることにしました。
あとはエゾエノキの精霊さんもちゃんと探したかったので。

今の自分が山梨に遠征するのはなにかと不安要素が多かったんです…(本音)





2018.07.16

日曜日の採集を止めたくらいには普通に疲れてたし、朝摘みを期待しても仕方がない時期かな…と思ったので遅めに起きて出発。
スタート地点に着いたのは9時頃でした。




今回は…河川沿いに発達した段丘林を攻めます。
この地域ではいろんな所に段丘林が発達していて、クヌギやエゾエノキが多く生えているのも大体はその段丘林なのです。
段丘林やその周辺の里山的な環境をひたすら巡っていけばいい木も見つかるはず!

最初に訪れたのは以前の採集でエゾエノキが多く生えているのを確認した場所。




幹を見てみても脱出孔らしきものは見当たりません。
角度を工夫すればそんな風に見えないこともないけど、これは多分違う…

スウィーピングもせずスルーしてしまいましたが、そういえばエゾエノキにつく精霊はトオヤマシラホシだけでは無いのだった…(この辺りには生息してるのかな?)




オニグルミもあります。
オニグルミにつく、クルミナガタマムシはそろそろ出始めかまだ早いかというかなり微妙な時期っぽい…
しかしエゾエノキもクヌギもダメだと何も出来ずに終了してしまうので、スルーせずに見つけたオニグルミを1本ずつスウィーピングしていきます。




クロヘリアトキリゴミムシ
Parena nigrolineata nipponensis Habu, 1964

しばらくやっていると、初採集のクロヘリアトキリゴミムシが入りました。
アオヘリの方は去年埼玉の河川敷で採集しましたが、真夏のスウィーピングで採ったので何か違和感。

自分が思ってたより季節が進行している…!?

これだけではさすがに断定できませんが、後々この考えが割と間違ってないと気付かされることに…


枯れ枝とかも意識しながら掬っていると、初めて見るカミキリが入りました。




フタスジゴマフカミキリ
Mesosa (Lissomesosa) cribrata Bates, 1884

通称「クリブラータ」
何となくこの文字列に見覚えがあったので調べてみると…珍種ゴマフ三兄弟とか呼ばれてるカミキリの一つだった事が判明した(汗)
残り2種、ヨツボシシロオビゴマフ(メディオ)とマダラゴマフ(ポエキラ)はちゃんと認識でき…て無かったけど、フタスジゴマフカミキリに関しては存在を全く知りませんでした…

一応オニグルミを寄主とするカミキリだったようで…枯れ枝を掬っておいたのはやはり正しかった(笑)
採集するときに触角を片方吹っ飛ばしてしまったのがちょっと惜しいけど…よく見ると渋いいいカミキリです。




カラカネチビナカボソタマムシ
Nalanda ohbayashii Y. Kurosawa, 1957

カラカネチビナカボソタマムシもポツポツと…計3頭採れました。
やっぱりこいつは山奥に行き過ぎない方が採りやすい虫みたいです。

こいつが採れる所では必ずオニグルミノキモンカミキリもたくさん採れています。
オニグルミノキモンカミキリも同様に人里近い所の方が多い虫だったようで…去年の谷採集であまり採れなかったのも納得です。

オニグルミノキモンは最近では掬えば必ずと言っていいほど入る“いつものやつ”に成り下がりました。

ガラリオさんが去年クルミナガを採集された時に一緒にオニグルミノキモンカミキリを採っていたのを思い出したので、クルミナガも同じような環境を掬い続ければいつか出会えるはずだと思っている…


他には、オオアオゾウムシはここでは見かけなかったような、1頭くらい見かけたような…
(オオアオゾウムシは小川沿いとか水に近いオニグルミに特に多いイメージがあります)

オナガシジミも何頭か見かけましたが、シーズンも終盤なのかみんなボロボロでした。

こんな感じでオニグルミにつく虫が色々見られたものの…やはりクルミナガは現れなかった。

今だと時期の問題か場所や技術の問題か分からないのでスウィーピングを続けるべきか悩む事も多かった。
オニグルミ、無駄に多いので…

そもそもクルミナガ自体が局所的な虫のようで、この辺りに生息しているかどうかすら定かではないのですが(汗)




日当たりは悪いけど、大きなエゾエノキ。
以前この木で脱出孔らしきものを1つ見つけた記憶があったので一応来てみたのですが、スウィーピング出来そうな感じじゃないし日当たりも悪いし…脱出孔らしきものも見当たらなくなっていた。

この近辺にはいないか、段丘林ではダメなのか。
やっぱり中信で採集した時と同じような環境に生えてるエゾエノキを探した方がいいのかな…?


エゾエノキの確認が終わった所で、大きく場所を変えて未探索のエリアへ。



20180720231118c77.jpeg
ひたすら自転車をこぎ、押して歩いて辿り着いたのは…伐採地でした。
「ここ伐採地かも?」と少し前から気になっていた場所があったので来てみたら見事に当たりでした。
しかし、気づくのが遅すぎた…

もうあと2ヶ月くらい早く来てればナガタマとカミキリの天国だったに違いない…
もうこの伐採地ではナガタマムシの姿は見当たりませんでした。

ナガタマムシが居なくなった後の伐採地に現れる虫といえば…
そんな事を考え始めた頃に近くで飛び立った虫を見て、一瞬でその正体を確信する。

最初の一頭は見失ったものの、待っているとその後も飛び立つ個体や伐採木に飛来する個体が次々と見つかりました。




クロタマムシ
Buprestis (Ancylocheira) haemorrhoidalis japanensis E. Saunders, 1873

「夏だ…」

オニヤンマなんかも数頭飛んでて…完全に真夏の雰囲気です。
クロタマムシに関しては去年の採集でたくさん見られたのがたまたま真夏だっただけかもしれませんが…アカマツの多い伐採地に最後に(真夏に)現れるタマムシのイメージが強いです。

カミキリに関しても既にアカハナカミキリやオオヨツスジハナカミキリ(この場所では本種がとても多かった)ばかりになっており…シーズンの終わり感が(汗)


この日の気温は何℃だったか忘れたけど、去年の採集を思い出すほどにかなり暑い日で、日陰の少ない伐採地では歩き回るだけで体力をかなり消耗してしまいます。

去年はこんな環境でよくスウィーピングなんてやっていられたものだと思う(疲れ果ててダメな日もあったけど)。
今年は涼しげな谷で生ぬるい採集ばかりしていたせいか、今日の伐採地では全くスウィーピングする気になりませんでした(汗)






ボーッと突っ立ってるだけでも飛んでいるクロタマムシが視界に入ったり、材についている個体を見つけたりする事もあります。
樹皮に溶け込んでいるつもりでも、カラマツの上では頭部の赤が目立ちます。


暑すぎてスウィーピングもやる気にならず、この後どうしようかとその場で立ち尽くしていた時…飛翔するタマムシの姿が見えました。
クロタマムシよりはるかに大きい…(ヤマト)タマムシのサイズ感。

この環境であのサイズ感のタマムシってことは…!!!

低い位置を飛ぶそのタマムシを必死に追いかけて、ここぞというタイミングで網を振り抜く_____

が、そのタマムシは網を振り抜く直前に目の前の低木に止まった。





「やばい!!」


このまま網を振り抜けば確実に失敗する、そう分かったけどコントロールが間に合わず…網は低木に衝突して止まり、タマムシは茂みの中に消えた。

一瞬見えたその姿は確かに、ウバタマムシだった。

茂みの中をかき分けて必死に探したものの、やはり見つけられなかった…
茂みから撤退しようとした時に、軍手をしていた左手の人差し指にこれまで感じたことの無いレベルの激痛が走る。



「痛ってえええええ!!!」

ノイバラとかのレベルじゃない、その痛みだけでハチに刺された事が分かった(汗)
同時に、左手からキアシナガバチが吹っ飛ばされていくのが見えた…

記憶の限りだとこれが人生初のハチ刺されになると思う。
(数日間、左手人差し指周辺がひどく腫れたものの特に何もなく終わりました)

今回は明らかに攻撃してくる感じで飛んで来たけど、茂みの中ですぐ逃げられなかったし何よりハチに刺された事がなかったから完全にナメてた…今後は気をつけよう(汗)
スズメバチとかじゃなくてほんと良かった…


「泣きっ面に蜂とはまさにこの事だな(笑)」

想像を超える痛みに狼狽ながら口から出て来たのはそんな言葉だった…
勘弁してほしい(笑)

ようやく生きてるウバタマムシを見つけたのに逃げられるとか、納得いかないな、コレは。

しばらくは周囲の切り株や立ち枯れの根元なども徹底的に探し、再び飛び出すのも待っていましたが…そこで再会は果たせませんでした。



この伐採地でウバタマムシが発生してるのは間違いなさそうなので、きっと他の個体に出会える。そう信じて歩き出す。
新たなウバタマムシを見つけたのはほんの数分後の事でした。

斜面の下を場所を飛ぶウバタマムシ。
押していた自転車を投げ飛ば…さず普通に止め。背負っていたリュックも放り投げ…ずそのまま全力で走って追いかける。

こんなに全力で走ったの何年ぶりだろうってくらい全力で走ったが、あまりにも遅かった…(笑)
斜面から上がって来て、少し高い位置を優雅に飛んでいるウバタマムシ。

50mくらい走って、後一歩の所まで距離が縮まった。

走りながら長竿を伸ばし、腕も限界まで伸ばす…


「届…かない…!?」

「なんでだよ…!?」



渾身の一振りを交わしたウバタマムシは嘲笑うかのように斜面の下へ飛んでいった…
私の足もそこで止まってしまった。

縁が無いなんてレベルじゃない…ウバタマムシに完全に嫌われている(汗)


「いや、まだだ…」




最後どの辺りに止まったのか確認出来なかったけど、ウバタマムシはこの辺りに消えていったように見えた…
またすぐに飛ぶはず…そこで勝負を決めるしかない。



数秒後、再び飛び立ったウバタマムシ。

「さあ来い!!」

そんな呼びかけに応じるように…ウバタマムシはゆっくりと目の前に飛んで来た。
今度は落ち着いて、下に構えていた網を上に振り上げた_____





ウバタマムシ
Chalcophora japonica japonica (Gory, 1840)


しっかり、網の中に収まっていました…
最後にウバタマムシに出会ったのは2014年の夏以来…実に4年ぶりの再会になりました。

当然、生体に関しては長野県では初採集になります。
この4年の間はウバタマムシの生体にはとことん恵まれず、死体や翅を虚しく集めるばかりでした(笑)

この一頭で満足してしまいましたが、この他にも何頭か見かけたので今後またウバタマムシに会いたくなったらここに来れば良さそうです。
冬場にもまた来よう!




この伐採地の唯一残念な点はミズナラが無いこと。
ミズナラさえ生えててくれればクロホシタマムシも期待できるのですが…

去年の中信の伐採地では見られなかったウバタマムシが見られるという点では…もはやその点だけでもこの伐採地にも充分希望は持てるので、来年はたくさんお世話になります!(宣言)


伐採地を後にして、その後は再び段丘林沿いを流していく。





太いクヌギが伐採されている場所がありましたが、タマムシもカミキリも見当たりませんでした。
この環境でいないとなるとやっぱりダメか?

もっと、いい立ち枯れとかがあればいいのかな…

今日はここでトオヤマもトガリバも完全に諦めがつき、残りはオニグルミを掬う時間になりました。
伐採地で激しく体力を消耗し、正直すぐ帰りたいくらいに疲れてる中でやるのは辛いものがある(汗)
けど中々来れないところまで来てしまったので、せっかくだから掬っていかないと。

自転車で移動しつつオニグルミを見つける度に止まり、嫌な顔をしながらスウィーピングをしていく(笑)
入るのはオニグルミノキモンカミキリばかりで、カラカネチビナカボソも入ってくれない辛い時間が続く…


伐採地を後にしてから1時間ほど経った。




「もういいだろ。」

クルミナガがまだ出てるか分からない以上…今やるべきことじゃない。
確実に出てるなって時期にやらなきゃ何も掴めない。

今日はもう帰ろう…
網枠を外し、地面に置く。

何気なく見た地面の草に紛れて妙な虫がいるのが見えた。
ミカドアリバチか!と思い草をかき分けると、そこから出て来たのはなんと…




ダイミョウアトキリゴミムシ
Cymindis (Menas) daimio Bates, 1873


ダイミョウアトキリゴミムシだった(汗)

実はこの虫、夜回りポイントでも随分昔に確認されている虫の一つで…今年の私的夜回り目標種の一つでもありました。
夜回りポイントとは程遠い場所ですが、今回は運が良かったです(汗)

そしてなんとこの翌日、先輩が夜回りでダイミョウアトキリを召喚したそうです…
本当に存在したのかっていうか…この時期に現れる虫なのか!?


一応の目標だったシラホシナガ2種は爆死したけど、ダイミョウアトキリが採れてくれたならそれだけで今日採集に来た甲斐があったと言える。

これで少しやる気を取り戻して、
①最後に近くのオニグルミを掬って、確認。はたいて虫を落とした後…折りたたんだ網を自転車のカゴに入れる。
(この日はずっとこんな感じで網を畳んだり広げたりしながら自転車で移動してました)

②20分ほど自転車で走った所で、段丘林エリアを抜け田園地帯へ。
ここで採集道具を片付けることに。

③網を広げて、再びはたいて外側に付いているゴミをしっかり落とす。

網の内外を返して反対側も…!?




「今のは…何?」

網の中、正確に言えば本来外側だった部分には何故か 小さなタマムシの姿があった。
体型から見てカラカネチビナカボソだろうと思ったけど、この展開は… まさかがあるんじゃないかと一瞬期待してしまった自分がいた。

そして…




そのまさかだったのでした…






クルミナガタマムシ
Agrilus kurumi Y. Kurosawa, 1957


目標だったクルミナガタマムシとの初めての出会いは… 田んぼが広がる殺風景な場所でした(笑)
唯一の個体が、一番最後にオニグルミを掬った場所からここまでの様々な困難を奇跡的に乗り越え、網についたまま運ぶことに成功していたという… どんな奇跡だよ(汗)

このあいだのスジバナガといい今回のクルミナガといい運に味方されてばかりだ…

そして、これが自己採集タマムシ70種目となります。
現れてくれて本当にありがとう。
この1頭が採れただけで今日の頑張りが無駄じゃなかったって思えるから、大きな1頭だ…

これまでに何本オニグルミを掬ったことか…(多分そんなに掬ってない)
まだ時期が早いかもしれないからまた探しに来よう。
全く同じ場所に来るかどうかは分からないけど(汗)

頑張ってオニグルミを掬ったのにクルミナガに関して得られたものはナシ、若干落ち込み気味だった所にこんな嬉しいサプライズがあって…大満足でこの日の採集は終了となったのでした。


当初の目的は外したものの…嬉しい成果もあってやはり行って良かった。近場採集にハズレなしと改めて感じました。

さて、これからは期末考査に突入という事で…しっかり単位を採集して夏休みを迎えられるように頑張りたいと思います!!
今年は本当に頑張らないとマズい…気がする(汗)


【結果】 ※色付きは自己初採集

ウバタマムシ
Chalcophora japonica japonica (Gory, 1840)
1ex.

クロタマムシ
Buprestis (Ancylocheira) haemorrhoidalis japanensis E. Saunders, 1873
4exs.

カラカネチビナカボソタマムシ
Nalanda ohbayashii Y. Kurosawa, 1957
3exs.

クルミナガタマムシ
Agrilus kurumi Y. Kurosawa, 1957
1ex.

ダイミョウアトキリゴミムシ
Cymindis (Menas) daimio Bates, 1873
1ex.

クロヘリアトキリゴミムシ
Parena nigrolineata nipponensis Habu, 1964
1ex.


オオヨツスジハナカミキリ
Macroleptura regalis (Bates,1884)
1ex.

フタスジゴマフカミキリ
Mesosa (Lissomesosa) cribrata Bates, 1884
1ex.


シラオビゴマフケシカミキリ
Exocentrus guttulatus Bates, 1873
1ex.

ツマグロヒメコメツキモドキ
Anadastus praeustus (Crotch, 1873)
1ex.

ヒメアトスカシバ
Nokona pernix (Leech, [1889])
1ex.
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