掘ったり叩いたり


結局、埼玉の方では前回の記事に書いた他にはまともに採集に行けぬまま帰省が終了。
(サシゲチビを探しに近所に出かけて、チャイロスズメバチを採った程度)

集中講義とかがあったので今年は去年より早い時期に長野まで帰ってきました。
1ヶ月弱残った今年の夏休みはこちらで過ごします。

集中講義を終えて落ち着いたところで、久々となる長野での近場採集に出ることにしました。



2018.09.09


A谷へやってきました。
ここに来るのは実に2ヶ月ぶり。すっかり涼しい季節になり、聞こえてくるセミの鳴き声もごく僅かになりました。

今回はビーティングでのチビタマムシ採集、長野編という事で、初夏に確認したチビタマムシをビーティングを駆使して一種ずつ改めて狙っていきます。
ついでに沢沿いでチビゴミムシ狙いの採集をやる時間も取れればなと(汗)

前日、というか当日の早朝まで雨が降っていて、かつまだ曇っているため植物は濡れています。
このあと晴れてくれるようなので、陽が出て葉が乾くまでの時間でチビゴミムシ採集を行うことにしました。

目的地の沢へ向かいつつ、後でビーティングする事になる林縁の植物も見ていきます。




セスジスカシバ
Pennisetia fixseni fixseni (Leech, [1889])

最初に見つけたのはスカシバガでした。
今年は本当に縁があるスカシバガ…このセスジスカシバも初採集でした。
今回はアンモニアを充満させたケースに入れて、しばらくその場で放置したのち取り出してさらに注射、という感じで〆てみたのですが割と上手くいったような気がします。
この個体は元からスレてたけど、それでも今まで採集したスカシバガの中では一番綺麗な標本になりそうです。

これまでは酢酸エチル(除光液)で動きを止めてから…ってやってたのですが、除光液だと動きが止まるまで10分とかかかる事が普通で、それまでにボロボロになってしまう事も少なくありませんでした(汗)

アンモニアだと1,2分で止まってくれます。
蛾を〆る時はケチらずにアンモニア使っていきます…




チビタマムシがつく植物の一つ、ウツギがありました。
林縁に多い対生の低木で、6月頃に白い小さな花をたくさん咲かせます。

ビーティングは天候に関係なくできる採集方法の一つ、という事で少しだけ試しにやってみる事にしました。




左: ソーンダースチビタマムシ
Trachys saundersi Lewis, 1893

右: アカガネチビタマムシ
Trachys tsushimae Obenberger, 1922

しっかりウツギのチビタマムシ2種が落ちてきてくれました。
普通種とはいえ、新しいやり方でしっかり採れてくれると嬉しいものです。
ビーティングはスウィーピングとは違って、虫が落ちる瞬間が見れるので「今この枝先から落ちた」というのがしっかり分かるのもいいですね。

落ちてくる個体数も思ってたより多くて結構楽しいです。




60cm枠の網で受けてますが、水滴ですぐに網がビショビショになりました。
今のところビーティングネットを導入する予定はありません…
(チビタマムシ狙いの場合、網を使う事にも一応メリットはあるので)

ソーンダース、アカガネを少しずつ採集したら一旦ビーティングをやめて沢へ向かいます。
本当は以前キバナガゴミムシなど色々なゴミムシが得られた奥地の沢まで行くつもりだったのですが、あそこまで行くのはかなりしんどいので、近くの行ったことない沢で妥協してしまいました(汗)



201809130021313c4.jpeg
こんな感じの沢を登っていきます。
登り始める前、採集装備を整えていた時に足元の礫の上を駆けていくゴミムシが視界に入りました。




クロヒゲアオゴミムシ
Chlaenius (Achlaenius) ocreatus Bates, 1873

初採集のクロヒゲアオゴミムシでした。
河川敷とか湿地に多いコガシラアオとは雰囲気が思ってたより異なっていて、すぐにそれと分かりました。
上翅は青みがかり綺麗です。

原色図鑑では「渓畔の石下に多い」との事で、まさしくそんな環境でした。




ほんの少し登ったところ。
源頭部まで辿り着くには相当登らなければならなそうでした…本来行くはずだったポイント行く方が早かったかもしれない(汗)
あんまり大きな礫が沢沿いに溜まっている感じでもなく…




登ってる途中、水際に粘土混じりの礫から成る層が見えていたので、何かゴミムシでも出ないかと思って少し崩してみました。
すると、かなり大きなナガゴミムシが現れた…





ウエノオオナガゴミムシ
Pterostichus (Paralianoe) uenoi uenoi Straneo, 1955

この手の沢沿いに住むナガゴミムシでこんなに大きなものは初めてなのでとても嬉しかったです。
(これでチビゴミムシが採れなくても今日は安心して帰れる…とか思った)

その後もしばらく沢を登り続けていくと、沢沿いの崖が崩落して礫が溜まっている場所があったので、そこで掘る事にしました。

(写真撮ってなかった)




ガロアムシ
Galloisiana nipponensis (Caudell et King, 1924)

ガロアムシは沢山出てきました。
石起こしとかやってるとマルクビゴミムシの類、マルガタツヤヒラタゴミムシ、ニッコウヒメナガゴミムシあたりが出てきました。

掘りもやっていたのですが、この日は全然上手く掘れず…4時間ほどやった所でやる気が失せて終了しました(汗)




ムナビロナガゴミムシ
Pterostichus (Lianoe) abaciformis Straneo, 1955

大きめの初見ナガゴミムシが採れたのが嬉しかったくらいでした。
帰宅後に色々問題点を考えたのですが、結局は自分の根性の無さに帰結するような気がしました(汗)


決して楽に採りたい訳ではない。

単純にTrechiamaが採りたいだけなら、然るべき場所で石起こしなりしてオンタケナガチビとかを狙えばいい話です。
でもそれじゃ絶対納得できないだろうから…

地下浅層という、意味の分からない所で。
「こんな所で生きてるチビゴミムシがいるんだ」っていうのを感じながら採集できたらいいなって思ってるんです。

掘り以外にもトラップとか色々楽できる方法があるのは分かってるけど、それでも最初は掘りで出したいから…

だからこそ、何度心を折られても私は地下浅層に挑み続けるのでしょう…



この日はとりあえず引き上げます。
沢から脱出した頃には天気も良くなっていて、ビーティングも問題なく行えそうだったのでチビタマムシ採集を再開しました。

標高1000m位ですが、ウツギやクズにはチビタマムシの姿は無く、叩いても何も落ちてきませんでした。
下りながら林縁を見ていき、最初に見つかったチビタマムシは…





マメチビタマムシ
Trachys reitteri Obenberger, 1930

マメチビタマムシでした。
ヤブマメ自体は道沿いの地表付近にずっと生えてるのですが、食痕のあるヤブマメは狭い範囲に固まって存在していて、チビタマムシもそこではまとまって見られました。
個体ごとにポツポツといる感じじゃなくて、小さな集団が分散して存在している…?ような感じでした。

チビタマムシにも好む環境があるのだろうと思いますが、イマイチ掴めません…





コウゾチビタマムシ
Trachys broussonetiae Y. Kurosawa, 1985

ヒメコウゾではコウゾチビタマムシ。
ビーティングでもしっかり3頭くらい入ってくれました。
初夏のスウィーピングだとルッキングで見つかる割に掬ってもあんまり入ってこなかった記憶があるので、この虫もビーティングの方が相性がいい的な所があるのかもしれません…





左: ソーンダースチビタマムシ
Trachys saundersi Lewis, 1893

右: アカガネチビタマムシ
Trachys tsushimae Obenberger, 1922

ある程度標高を下げるとウツギに食痕が見つかるようになり、チビタマムシ2種も落ちてきました。
この辺りではアカガネチビタマムシの方が多く落ちました。

この辺りのクズでもクズノチビタマムシは見つからず、挙げ句の果てには初夏に複数個体を確認した場所でも見つけられませんでした…
(クズノチビタマムシが全然採れなくて苦しめられた時期があった事を思い出した)




ウメチビタマムシ
Trachys inconspicuus E. Saunders, 1873

樹木の写真撮るの忘れましたが、初夏にスウィーピングしてダメだった木でビーティングしたらやっぱりウメチビタマムシが採れてくれました。
ウメがあれば割といるやつなのかもしれない…





ヒラタチビタマムシ
Habroloma subbicorne (Motschulsky, 1861)

地表付近に生えるナワシロイチゴはかなり叩きづらいですが、どうにかヒラタチビタマムシもビーティングで落とす事が出来ました。




さらに歩き続けて、「これで採れないわけがない」というレベルで食痕があるクズを見つけたので叩くと…無事にクズノチビタマムシを4頭得ることができました。
今日は採れないかと思った(汗)




この辺りにもウツギはあって、食痕が多い木を叩くとおびただしい数のソーンダースチビタマムシが落ちてきました。
ようやく辿り着いた…クズノチビタマムシとソーンダースチビタマムシの混生地。

来たところでどうしようもないのだけど…
この日はもう日が暮れて辺りも暗くなってきたし、このあたりで採集を終えざるを得ませんでした。

すぐに真っ暗になりましたが…帰りに寄り道してもう1種チビタマムシを追加して帰ることにしました。





ヌスビトハギチビタマムシ
Trachys tokyoensis Obenberger, 1940

ヤブマメが近くに無く、ヌスビトハギがあるここで採れるのは間違いなくヌスビトハギチビタマムシなのですが…過去に別の場所で採集したヌスビトハギチビタマムシに自信が持てなくなってきたので…改めてしっかり採集してマメと比較してみました(汗)




酷いクオリティの写真ですが…
左がマメ、右がヌスビトハギです。

前胸腹板突起が角ばってるのがマメ、丸いのがヌスビトハギです。
大図鑑にはマメチビタマムシの前胸腹板突起側縁は平行と書かれているのですが、平行に見えない事も多くて「平行じゃないならヌスビトハギか」と同定してしまった記憶が結構あるのです…(汗)

過去の採集品を見直した方が良さそう(汗)


そんな感じでこの日の採集は終了です。




上から時計回りに、
ヒラタチビタマムシ
クズノチビタマムシ
マメチビタマムシ
アカガネチビタマムシ
ウメチビタマムシ
ソーンダースチビタマムシ
ヌスビトハギチビタマムシ
コウゾチビタマムシ

…ということで今回は8種類のチビタマムシを採集することができました。
この他にもヤナギチビ、ドウイロチビ、ヤノナミガタチビ辺りは近場でも狙えるかと思いますが、ビーティングで狙える機会は限られそうです(汗)

近場で狙いたい虫は他にもいるので、その時に残りのチビタマムシも一緒に狙えたらいいなと思っています。
あとはそろそろ未採集のチビタマムシを狙った遠征も考えてもいいかなと…(行けるか分かんないけど)


【結果】 ※色付きは自己初採集

クズノチビタマムシ
Trachys auricollis E. Saunders, 1873
4exs.

ソーンダースチビタマムシ
Trachys saundersi Lewis, 1893
5exs.

ウメチビタマムシ
Trachys inconspicuus E. Saunders, 1873
2exs.

ヌスビトハギチビタマムシ
Trachys tokyoensis Obenberger, 1940
4exs.

アカガネチビタマムシ
Trachys tsushimae Obenberger, 1922
3exs.

コウゾチビタマムシ
Trachys broussonetiae Y. Kurosawa, 1985
4exs.

マメチビタマムシ
Trachys reitteri Obenberger, 1930
2exs.

ヒラタチビタマムシ
Habroloma subbicorne (Motschulsky, 1861)
2exs.

ムナビロナガゴミムシ
Pterostichus (Lianoe) abaciformis Straneo, 1955
1ex.

ウエノオオナガゴミムシ
Pterostichus (Paralianoe) uenoi uenoi Straneo, 1955
1ex.


マルガタツヤヒラタゴミムシ
Synuchus (Synuchus) arcuaticollis (Motschulsky, 1860)
1ex.

クロヒゲアオゴミムシ
Chlaenius (Achlaenius) ocreatus Bates, 1873
1ex.


オオニジュウヤホシテントウ
Henosepilachna vigintioctomaculata (Motschulsky, 1858)
1ex.

ゴイシシジミ
Taraka hamada hamada (H. Druce, 1875)
2exs.

セスジスカシバ
Pennisetia fixseni fixseni (Leech, [1889])
1ex.




2018.09.01(埼玉)

チャイロスズメバチ
Vespa dybowskii Andre, 1884
1ex.
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コメント

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>>(非公開)さん

雨の日でも出来なくはないですが、やっぱり晴れの日の方が快適ですね…
これからの時期はスズメバチに気をつけないとですね。