吉丁虫色の日々
執虫

昆虫採集記と標本作成の話

新地開拓やり直し

2018年06月27日
タマムシ科 0

2018.06.02

この日は先週辿り着けなかったB谷の奥地まで行くため、早朝から採集に出かけました。
市民薄明とともに出発しようとすると朝早くなりすぎて前日の疲れを引きずる事が心配だったので、日が出た後に出る感じで行きました。




目的地に向かう途中、時刻は6:35。
朝日に照らされたカキノキがありました。こんな環境ならもしかすると…

日当たりのいい葉上をルッキングすると、思った通りあのナガタマムシが見つかりました。




ツヤケシナガタマムシ
Agrilus nipponigena Obenberger, 1935

カキノキに付くツヤケシナガタマムシは、個人的にあんまり縁がないタマムシの一つです。
カキノキ自体が採集できる場所に生えてない場合が多くて…




カキノキの葉上だけでなく、その下に生えていたフキの葉上でも見つかりました。
追加個体を探してフキもルッキングしていると、青いナガタマムシがいた。

「なんだこれ…さすがに違うよな?」

最近何度か騙されかけてるので疑いつつもよく見てみる…

やっぱアサギかな…あ、落とした。
今のがツヤナガだったらシャレにならないな…

そんなわけないわと思いつつ、気になるので落ちた個体を探していると、一回り大きな個体が見つかった…











「なんだ!?!?」

どう見てもアサギナガの大きさではないし、強烈な光沢を放っている…

これはまさか本当に当たりを引いてしまったのか…!?





ツヤナガタマムシ
Agrilus cupes Lewis, 1892


確認した結果、やはりこれはツヤナガで間違いないだろうという結論に至りました。
自己2種目となる★★★★の珍品。バイカウツギに付くナガタマムシとされていますが、この付近でバイカウツギらしき植物を見つけることは出来ず…何故フキの葉上にいたのかは全くもって不明。奇跡の1頭でした(汗)
落とした個体もツヤナガだったんじゃないか…?

自分の管理ミスで、展足後の写真を載せる気にならないほどボロボロにしてしまったのが非常に悔しい。
次に出会えるのがいつになるか分からないというのに…

付近を改めて調べましたが、さすがに追加個体は得られず…先へ進むことに。
道が間違っていないことを確かめながら進み、目的地の谷に入っていきます。




スウィーピングをしながら進んでいると、一本だけですがシナノキがありました。
気合いを入れてスウィーピングをしていくと…




タケウチトゲアワフキ
Machaerota takenouchii Kato, 1931

シナノキにつく虫の一つ、タケウチトゲアワフキが入りました。
個体数はかなり多かった。




ハンノアオカミキリ
Eutetrapha chrysochloris chrysochloris (Bates, 1879)

他には初採集のハンノアオカミキリも入りました。
こちらもシナノキにつくことのある虫だったようです。

期待していたシナノキチビタマムシは入らなかった…




他の場所でもそうですが、沢に近づくにつれて植生がが単純になっていきます…
虫的にあんまり面白くないフサザクラがとても多いです…(汗)




時刻は8:50。日当たりのいい場所でバイカウツギを見つけました。
ここにツヤナガがいてもおかしくはない。慎重にルッキングしていく…




「!!!」

なんと葉上にナガタマムシが!
まさか、と思ってよく見てみると…ダイミョウナガタマムシだった(笑)
(しかも2頭いた)

さすがにダイミョウナガの寄主植物にバイカウツギは含まれてないと思うんだが…
帰りに通った時もチェックしましたが…そこにナガタマムシの姿は無かった。
ツヤナガもそうだけど、もしかしたら朝のナガタマムシはこういうよく分からない低木の上にいるものだったりするのでは…



201806262043481cd.jpeg
この谷の道沿いにはヤマハンノキ(勘違い)が多く生えていたので、それを一本一本掬いながら進んでいきます。
しかしルリハムシが延々と入ってくるだけ…





ロニノナガタマムシ
Agrilus nicolanus Obenberger, 1924

イタヤカエデの類を一緒に掬ったとき、網の中にロニノナガタマムシが入っていました。
クヌギを寄主とするタマムシみたいですが、未だクヌギから採れたことはない…
というかこの付近にはどう考えてもクヌギは生えてないと思うのですが、一体どこから発生してるんだろう…?




ダイミョウナガタマムシ
Agrilus daimio Obenberger, 1936

何故かそこだけやたらとダイミョウナガが入るヤシャブシがありました。
今日はダイミョウナガに縁があるらしい…(汗)
相変わらずヤシャブシに付くあのタマムシは採れる気配なし。




小規模ですが伐採木が積まれた場所がありました。
ここでは無数のアオバナガクチキが見られた他、キスジトラカミキリやハネビロハナカミキリも採れました。

アカマツの材もあって、




オオマルクビヒラタカミキリ
Asemum striatum (Linnaeus, 1758)

オオマルクビヒラタカミキリが1頭いました。
タマムシは何も来ていなかった。

アカマツの材を見ていた時に、物音がしたので調べてみると…




やっぱり!




エゾハルゼミ
Terpnosia nigricosta (Motschulsky, 1866)

そこにいたのは…エゾハルゼミでした。
鳴き声はいくらでも聞こえて来ますが、基本的に高い所にいることが多くて…実物を見たのは今回が初めてでした。

去年の中信の採集では基本的にハルゼミの鳴き声しか聞きませんでしたが、より標高が高いこちらの採集ではエゾハルゼミの鳴き声しか聞こえて来ません。

ハルゼミとエゾハルゼミは標高で住み分け(?)してるようで、山を下ると鳴き声はハルゼミと入れ替わります。
大体900mくらいで入れ替わるような感じ。場所によっては両者の鳴き声を同時に聞くこともあります。

こちらもハルゼミ同様に羽化したての個体を昼間に見つけることができるようで、上の♂もそうですが、




別の場所で♀も一頭拾えて無事にワンペア揃いました。
鳴き声を聞くだけで採集できずにシーズンを終えるんじゃないかと不安になってた所だったので、どうにか採集できて良かったです(汗)


その後ミズナラやコナラのスウィーピングをしていると、ちょっと意外な虫が入った。




ムネアカナガタマムシ
Agrilus imitans Lewis, 1893

何気に長野県で採集するのは初めての、ムネアカナガタマムシでした。
エノキを寄主とするタマムシですが、この近辺だとエゾエノキしか生えてなさそうなのでエゾエノキから発生しているのかな…と思います。

何となくこちらの地域では少ない虫のイメージがあるので、結構ラッキーだったのかもしれない。




河原。
バーベキューには良さげな感じの場所で、炭も若干残ってました。



…お分りいただけただろうか。






スミナガシ
Dichorragia nesimachus nesiotes Fruhstorfer, 1903

炭の中に紛れて…スミナガシがいました。いい場所を選んだな(笑)
偶然ではなく本当に炭や灰の成分を吸いに来ていたみたいです。

足元にいたのに飛び立つまでまったく気がつかなかった…見事な炭擬態です(笑)
ちょっと欠けてるけど、これはしっかり採集します。




林縁。
水辺から遠ざかればヤマハンノキは少なくなり、代わりにコナラが増えます。
なぜかこちらの地域ではミズナラが少なく、クロホシタマムシには出会えそうにありません。標高的には十分だと思うのですが…

ここのコナラのスウィーピングではウグイスナガタマムシの他、シラケナガタマムシが得られました。




ヤシャブシ。

ヤマハンノキは次第に少なくなり、コナラとヤシャブシをひたすら掬っていくだけになってきている。
ヤシャブシにはルイスナカボソタマムシの他にあのカミキリがつく。

頭の片隅にあったその情報をふと思い出して、ここでヤシャブシの枯れ枝を意識して掬ってみる。
と、枝から枝へと飛んで移動した虫の姿を捉えました。
その虫が移動した枝を頑張って掬ってみると…




ヨコヤマトラカミキリ
Epiclytus yokoyamai (Kano, 1933)

ヨコヤマトラカミキリ、再会。
「ヤシャブシの枯れ枝を掬う」という方法はどうやら本当に有効な採集方法だったらしいです(汗)

もうちょっと採れたりしないかと、さらに掬っていると飛び立つ虫が。
瞬時にカミキリと判断し、頭上を通り抜けようとしているそのカミキリをネットイン!




ブロイニングカミキリ
Saperda ohbayashii Podany, 1963

何故ブロイニングがここに…これはこれで嬉しい(笑)

すぐ近くにクルミの木があったのでそこから飛来したものだったのでしょう。
非常に格好いいカミキリ2種と再会できてとても嬉しかった。


この後は谷の最深部まで行ったものの良さげな環境は無く、この日の採集は終わりにして引き返す事に。

そして帰り道。




今までヤマハンノキだと思っていたコレがヤマハンノキではない事に気がつく。
(調べた結果、タニガワハンノキと判明した…)

本当に情けない事に全くこれに気づかず…今までA谷やこちらの谷で見つけたヤマハンノキの中にいくつ本物があったのか、全く分からなくなってしまった。
間違いなくヤマハンノキと分かる幼木を見た記憶はあるけど、高木のヤマハンノキはどのくらいあっただろうか…

これからヤマハンノキに挑むための下見、という重大な意味のある採集だったのにこれは非常にマズイ(汗)


大きな不安も残りましたが…この日は初採集のツヤナガタマムシの他、中々縁がないナガタマムシが色々と採れ、ついでにヨコヤマトラとブロイニングなども採れてかなり充実した採集になってました。
ツヤナガにはまた必ず会いに来る。

スウィーピング頑張った割にナガタマムシがあまり入ってくれなかったのが辛かった…
ヤマハンノキだと仕方ない…というかタニガワハンノキだと本当に時間の無駄でしかなかったかも。



B谷の環境を一通り見て、ヤマハンノキのスウィーピングをやるなら雰囲気的にはA谷の方が良さそうという結論に至りました。

しかし実際、A谷にどの程度ヤマハンノキがあるのか分からなくなり不安になった…ので。





2018.06.03

この日はテスト前なのもあって採集に行かないつもりだったのですが…
あまりにもいい天気で、梅雨入り前のこの時期に採集に行かないのは勿体ないと思い。
何より…ヤマハンノキがちゃんとあるのか確かめたくなったので、午後からA谷へ急遽行くことにしました。

出発したのが14:30とかだった気がする(汗)




農地脇のクワ。

以前A谷での採集から帰る際、途中の道にあるこのクワが目にとまりました。
埼玉の河川敷でクワナガタマムシが湧いていたのは似たような雰囲気の木だった事を思い出しました。

この木ならクワナガもそれなりに採れるかも…?

ついでなので今回確かめていくことに。



結果…結構いました(笑)
(時間なくて焦ってたので写真撮ってませんでした)
長野では少ないのかと思ってたけどそんなことは無くて、クワナガタマムシ自体が山奥より人里に近い方…こういった農地脇のクワみたいな環境を好む虫だったようです。

無事にクワナガの発生を確認したところで、A谷へ。






どうにか、本当のヤマハンノキをしっかり確認する事が出来ました。
タニガワハンノキと比べて葉が大きく、深く切れ込む鋸歯、赤くなる新葉が特徴です。
改めて見ると全然違うよな…(汗)

大きめの木もいくつか発見できたので、ヤマハンノキチャレンジの場所はここで決まりです。

後は残った時間で伐採木の溜まり場に行くことに。




ここに着いた時点で16:00過ぎ位でした。
かろうじてホソアシナガやウグイスナガが数頭いる程度で…他には特に何もいませんでした。
ムツボシタマムシとか来てるんじゃないか、と淡い期待をしていた私の心は砕け散った(笑)




ホソアシナガタマムシ
Agrilus ribbei Kiesenwetter, 1879

ミズナラの倒木ひこばえスウィーピングではホソアシナガが安定して入ります。
何となくアサギナガ的な色合いの個体でした。割とみんなこんな色だったっけ?(汗)

さらに近くのコナラを掬ってみる。




クロナガタマムシ
Agrilus cyaneoniger E. Saunders, 1873

ここで奇跡的にクロナガタマムシを採集。南信に来てからは初採集でした。
しっかり普通のクロナガタマムシですが、この間伊豆で見た個体と比べたら異常に青いように思えた(汗)




ヒシモンナガタマムシ
Agrilus discalis E. Saunders, 1873

林縁を適当にスウィーピングしてたら、ヒシモンナガタマムシが。
こちらも南信に来てからは初採集になります。
この辺にあるエゾエノキとか掬っても全然入って来てくれないのに…

他、オオモミジからミドリツヤナガも採集してこの日は終了。
短時間の割に南信ではまだ採れていなかったナガタマムシが採れ、ヤマハンノキの存在も確認でき…行った甲斐がありました。





バイカウツギの花が咲いていました。
ツヤナガの追加探しもそうだけどとりあえず次は…ヤマハンノキを徹底的に攻める!



【結果】 ※色付きは自己初採集

シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
1ex.

ツヤケシナガタマムシ
Agrilus nipponigena Obenberger, 1935
4exs.

ダイミョウナガタマムシ
Agrilus daimio Obenberger, 1936
4exs.

ムネアカナガタマムシ
Agrilus imitans Lewis, 1893
1ex.

ウグイスナガタマムシ
Agrilus tempestivus Lewis, 1893
1ex.

ツヤナガタマムシ
Agrilus cupes Lewis, 1892
1ex.


ロニノナガタマムシ
Agrilus nicolanus Obenberger, 1924
1ex.

シラケナガタマムシ
Agrilus pilosovittatus E. Saunders, 1873
1ex.

ヤナギチビタマムシ
Trachys minuta salicis (Lewis, 1892)
1ex.

ヒラタチビタマムシ
Habroloma subbicorne (Motschulsky, 1861)
1ex.

ムラサキモリヒラタゴミムシ
Colpodes integratus Bates, 1883
1ex.


未同定モリヒラタゴミムシ
1ex.

ヨコヤマトラカミキリ
Epiclytus yokoyamai (Kano, 1933)
1ex.

キスジトラカミキリ
Cyrtoclytus caproides caproides (Bates, 1873
1ex.

ブロイニングカミキリ
Saperda ohbayashii Podany, 1963
1ex.

ハンノアオカミキリ
Eutetrapha chrysochloris chrysochloris (Bates, 1879)
1ex.


ハネビロハナカミキリ
Leptura latipennis (Matsushita, 1933)
1ex.

アカイロニセハムシハナカミキリ
Lemula nishimurai Seki,1944
1ex.

キベリクロヒメハナカミキリ
Pidonia (Pidonia) discoidalis Pic,1901
1ex.

オオマルクビヒラタカミキリ
Asemum striatum (Linnaeus, 1758)
1ex.

未同定コガネムシ
1ex.


アカガネサルハムシ
Acrothinium gaschkevitchii gaschkevitchii (Motschulsky, 1860)
1ex.

ルリハムシ
Linaeidea aenea (Linnaeus, 1758)
1ex.

クロナガハムシ
Orsodacne arakii Chujo, 1942
1ex.


アオバナガクチキ
Melandrya gloriosa Lewis, 1895
1ex.

アカアシナガクチキ
Melandrya mongolica Solsky, 1871
1ex.


スミナガシ
Dichorragia nesimachus nesiotes Fruhstorfer, 1903
1ex.

タケウチトゲアワフキ
Machaerota takenouchii Kato, 1931
2exs.

エゾハルゼミ
Terpnosia nigricosta (Motschulsky, 1866)
2exs.




2018.06.03

ヒシモンナガタマムシ
Agrilus discalis E. Saunders, 1873
1ex.

クロナガタマムシ
Agrilus cyaneoniger E. Saunders, 1873
1ex.

ダイミョウナガタマムシ
Agrilus daimio Obenberger, 1936
1ex.

ミドリツヤナガタマムシ
Agrilus sibiricus fukushimensis Jendek, 1994
1ex.

ホソアシナガタマムシ
Agrilus ribbei Kiesenwetter, 1879
2exs.

クワナガタマムシ
Agrilus komareki Obenberger, 1925
2exs.

ミヤマジュウジアトキリゴミムシ
Lebia sylvarum Bates, 1883
1ex.

ニセヨコモンヒメハナカミキリ
Pidonia (Cryptopidonia) simillima Ohbayashi et Hayashi, 1960
1ex.


エゾハルゼミ
Terpnosia nigricosta (Motschulsky, 1866)
1ex.
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